「NCASE M1」は小さいけど“ハイスペック”も狙えるMini-ITX PCケース

NCASE M1の正面

自作PCというとフルタワーやミドルタワーなど、大きく存在感のあるケースが主流です。しかしその反対に、コンパクトなPCを作れるMini-ITXという規格も存在しており、これを使えば、デスクの上に置いても邪魔になりにくいサイズのゲーミングPCも作れます。

筆者が愛用しているのは、「NCASE M1」というケース。日本では入手しづらいモデルですが、小さい筐体でありながらも、拡張性の高さを犠牲にしていない点が魅力的。複数のファン取り付けや水冷クーラーも可能なので、発熱の多いハイスペックなパーツも搭載可能です。

なお筆者は、過去に「Dan Case A4-SFX」という、ほぼ最小といえるPCケースを使っていました。このケースとNCASEを比べると、NCASEのほうが組み立てもしやすく、またエアフローも作れるため発熱も心配になりません。そういったことからも、NCASE M1は、コンパクトでありながら使い勝手の良い、おすすめのケースです。

海外から個人輸入、どうすればいい?

さて、NCASE M1は国内で販売されていないため、購入するには個人輸入が必要です。人気のケースなので解説しているサイトは数多くありますが、ここでも簡単に紹介していきます。なお、国内では秋葉原のPCショップ「オリオスペック」で購入できる場合もありますが、品切れの場合も多いため、個人輸入のほうがおすすめです。

購入は、NCASEの公式サイトより行えます。サイトは英語ですが、シンプルな作りなので、翻訳しなくてもわかる方が多いと思います。

価格は本体が210ドル。基本的に選ぶ項目は色(BlackもしくはSilver)と、出荷日(Shipping Date)、個数(Quantity)です。

次に住所や名前といった発送先情報を入力したら、配送方法を選択します。4種類の方法が選べますが、一番安い17ドルのプランで問題ありませんでした。筆者は1週間くらいと早めに届いてしまいましたが、上位のプランを選ぶことで、より早い配送方法にすることも可能です。

ここまで入力したら、あとはクレジットカードで支払うのみ。なお発送は台湾からで、16,666円を超えるため関税が発生するはずですが、筆者の場合は特に請求されませんでした。

シンプルで高級感のある仕上げ

NCASE M1の外形寸法は、307×157×237mmです。小型PCは大きさを容積で表すことが多いのですが、本ケースの場合は12.7L。人気のミドルPCケース「Define 7」は約62Lであることを考えると、いかに小型であるかわかると思います。

通常、PCケースの素材にはスチールを使われることが多いのですが、本ケースではより高価なアルミが採用されています。ヘアライン仕上げの外側にはアルマイト処理がされているため、傷がついたとしても色がとれることはありません。210ドルとPCケースとしては高めですが、それに見合っただけの材質と高級です。

NCASE M1の前面パネル

筆者が愛用しているのは、最新のV6.1です。NCASE M1が発表されたのは10年近く前になるのですが、発売から細かな改良がされています。

たとえば前面パネルにあるUSB Type-C端子は、V6で搭載されたもの。Type-Cに対応する内部端子を備えているMini-ITXマザーボードがほとんどないのが現状ですが、最新の仕様にアップデートしてくれるのは嬉しい限りです。

NCASE M1の背面

外側がアルミであっても内部フレームまでアルミというケースは珍しいですが、NCASE M1では、フレームを含めたほぼ全ての素材がアルミでできています。おかげでパーツを取り付けていない状態では非常に軽く、また完成後であっても持ち運びやすい重さに収まってくれます。

ひとつ注意したいのが、フレームなどのパーツは塗装されたアルミであること。塗装はアルマイトとは違って傷に弱いため、ネジなどをつけると剥がれて跡が残ってしまいます。組付けの際には強く締めすぎないなど、やや繊細な作業が必要です。

なおそういったこともあり、筆者は背面ファンの取り付けは、傷のつきにくいゴム製のブッシュを使っています。見た目もよく、また防振効果があるので、ファンからの振動伝達を抑えて静音化にも寄与してくれるはずです。

コンパクトだけど組み立てやすい

NCASE M1を使って感じているのは、コンパクトなMini-ITX用のケースでありながらも、組み立てがしやすいということです。大きさが小さいケースだと、パーツ密度が高くなってしまうため作業しにくくなるほか、無駄な空間をへらすためにレイアウトが複雑になります。

NCASE M1の内部

たとえば先述したDan Caseでは、マザーボードの裏側にグラフィックボードを配置するようになっているなど、配置の工夫で小型化を実現しています。ほかにもグラフィックボードを縦にしたり、横に並べたりしているケースも多く存在します。こういったケースでは、一部のパーツを取り外さないと奥のパーツにアクセスできないなど、作業性が悪くなる傾向があります。

しかし、NCASE M1では、一般的なATXやMicro ATXケースと同じようなレイアウトを採用しています。電源の位置は前面パネル付近にありますが、グラフィックボードやマザーボードの向きなどは、馴染みのある配置です。

パネルを外したNCASE M1

特筆したいのが、左右と上面のパネルがすべて外せるということ。ネジを使わずに手ではめるだけなので、簡単に着脱が行なえます。上述のように、Mini-ITXのケースというと密度が高く、メンテナンスや組立時の作業性が悪いものが多いです。NCASE M1では3面のパネルが外れることで、狭い場所に手を突っ込まずとも、外からケーブルやパーツにアクセスできます。

たとえば上の画像にあるような電源のケーブルや、CPUクーラーのファンコネクタ、CPU用の電源コネクタなど、これらを苦労することなく取り付けられます。特にCPU周りのコネクタは、大きめのATXケースでも窮屈になることが多く、大型のヒートシンクを付けてしまうと抜き差しできない場合もあります。本ケースは小型にもかかわらず作業しやすいため、小型ケース初心者でも作りやすいケースだと思います。

小さいけど拡張性抜群なPCケース

Mini-ITXケースというと、拡張性を犠牲にすることで小型化させたモデルも少なくありません。たとえば上述したDan Caseもそのひとつで、CPUクーラーの高さは約48mmまで、3.5インチHDDの取り付け不可、ケースファンも条件次第では取付不可です。ケースによっては、ショートタイプのグラフィックボードしか使えないものも多くあります。

PCケースに取り付けたグラフィックボード

NCASE M1は小さいケースながらも、Mini-ITXケースで削られがちな拡張性も担保しています。さすがに大型のグラフィックボードは厳しいですが、それでも2.2スロットまでであれば322mm、3スロットであれば290mmまでのモデルが使用可能。コンパクトなものであれば、3ファン搭載のRTX 3090でも搭載できる水準です。なお筆者の場合は、Palit製のRTX 3060 Tiを使用しています。

またCPUクーラーは、92mmファンのモデルであればサイドフロー型も使用できます。筆者のPCでは、Dan Case時代からNoctua「NH-L9i」を使い続けていますが、トップフロー型なら120mmファンのモデルも搭載可能です。

ケース側面に付属のパーツを取り付けることで、ここに120mmファンを2つ設置できます。水冷式CPUクーラーでは、240mmのラジエーターを搭載することも可能なため、ハイエンドCPUであっても十分に冷やすことが可能です。

マグネット式のフィルターが付いているのも嬉しいところですが、この部分にファンを取り付けない場合は、代わりに3.5インチHDDの搭載にも対応します。このほかストレージでは、2.5インチのHDDやSSDを正面パネルの裏側に1基だけ搭載するスペースが設けられています。

購入してから気がついたのが、ケースファンが一切付属していないことでした。特に背面に取り付ける92mmファンは持っていたなかったため、be quiet!の「PURE WINGS 2」を購入して取り付けましたが、静かで風量もあるので良い選択だったと思います。少々価格が高くなりますが、Noctua「NF-A9」も選択肢としてはおすすめです。

NCASE M1の底面

ほか、底面には120mmを2基搭載できます。こちらもマグネット式のフィルターが搭載されていて、ケース内部へのホコリ混入を抑えることが可能。2.5スロットのグラフィックボードを取り付けた場合、15mm厚のファンまでしか取り付けられないことは注意点です。

まとめると、条件にもよりますが、最大で5基のファンを搭載できます。側面に120mm×2、背面に92mm×1、底面に120mm×2です。正面にファンを搭載できないためエアフローが作りにくいですが、小さいケースのため、これだけあれば十分な排熱が行なえます。

小型PC好きなすべての自作ユーザーに

筆者は2021年の3月に購入し、執筆時点で約半年使ってきたことになります。CPUにはCore i7 10700、GPUにはRTX 3060 Tiを使っていますが、92mmの背面ファンだけでも問題なく排熱ができています。本ケースではハイエンドのPCを作るユーザーが多いと思いますが、筆者のようにミドルエンドであっても十分に満足できるケースです。

また上でも説明しているように、コンパクトながらも組み立てやすいのは、思ってもいないメリットでした。これまで4台ほどMini-ITXケースで自作してきましたが、ここまで作りやすいのは初めてです。フレームがオープンになるため配線が楽で、これならパーツを交換することになっても、全く負担は感じません。

これまで数ヶ月から1年くらいの周期でケースを買い替えてきましたが、ようやく落ち着けそうです。NCASE M1は使い勝手がよく、拡張性が高く、それでいてコンパクト。使っていて不満になるような所がほとんどありません(あえていうなら電源ランプは青ではなく白が良かった)。

個人輸入しなければならないというハードルはありますが、住所と名前を入力すればクレジットカードで支払うだけなので、思った以上に簡単に購入できるはず。NCASE M1は、スペックに限らずPCを小型にしたい全ての自作ユーザーにおすすめしたいケースです。