スマホとの違いは?「電子書籍リーダー」のメリットを解説

電子書籍リーダーとスマートフォン

本を読む手段が、紙から電子に変わりつつあります。電子書籍は保管場所もとらないし、どこでも読めるという手軽さが魅力です。

さて、電子書籍を読むために必要な方法はいくつもありますが、最もユーザーの多い手段は「スマートフォン」でしょう。また、タブレットやPCで読んでいる方もいると思います。

ここで注目したいのが、電子書籍を読むための専用デバイスである「電子書籍リーダー」です。

筆者は移動中、スマートフォンで読むことが多いですが、自宅ではAmazonの電子書籍リーダー「Kindle Oasis」を愛用しています。

Kindle Oasisを手で持った状態

電子書籍リーダーは、やはり専用端末とだけあって快適で、慣れてしまうと、外出時以外はスマートフォンを使いたくないと感じるほどです。

スマートフォンとの大きな違いは、搭載しているディスプレイが違うということ。スマートフォンは「有機EL(OLED)」や「液晶(LCD)」を搭載してますが、電子書籍リーダーでは「電子ペーパー(E Ink)」を採用することが主です。

では、これらディスプレイごとの違いは何でしょうか。特徴を掘り下げながら、電子書籍リーダーのメリットを解説していきましょう。

電子ペーパーは「反射型」ディスプレイ

ディスプレイをざっくりと2つに分けると、ディスプレイが発光する「発光型」、環境光を反射する「反射型」に分かれます。有機ELと液晶が発光型、電子ペーパーが反射型です。

余談ですが、発光させる方法も2種類あります。有機ELはピクセル自体が自発光するタイプですが、液晶はそれ自体が発光しないため、バックライトで裏から照らしています。腕時計など反射タイプの液晶もありますが、スマートフォンやタブレットなどは、ほぼ全てが発光型です。

反射型のメリットは、明るい場所でも画面が暗くならないということ。有機ELなどは直射日光が当たる場所の場合、ディスプレイの明るさが負けてしまいます。外でスマートフォンの画面が暗いというのは、経験した方も多いのではないでしょうか。

スマートフォンと電子書籍リーダーを明るい場所で比較

しかし電子ペーパーでは、紙の本と同じように、環境光によってディスプレイの明るさが変わります。この特性は、電子書籍であっても「紙のように読める」ということに繋がるので、スマートフォンで読むのとは違った体験が得られます。

なお、電子ペーパーは暗い場所において、ディスプレイも同様に暗くなってしまうデメリットがあります。これを改善する方法として、フロントライトを内蔵する電子書籍リーダーが主流です。バックライトとは違いディスプレイの上から照らすので、ブルーライトを抑えた優しい光り方で読書を楽しめるのが魅力です。

フロントライトを発光させた電子書籍リーダー

ドットが見えにくくて「文字がきれい」

もう一つ触れておきたいのが、電子ペーパーでは「ドットが見えにくい」ということ。これは文字や線がメインとなる書籍を読むのにおいて、重要な要素です。電子ペーパーでは、文字のフォントがきれいに表示されます。

有機ELや液晶は多くの画素で構成されていて、ドットの組み合わせで文字を表示させます。近年のディスプレイはドットの大きさが小さくなりつつありますが、小さく文字を表示させた場合など、デバイスによってはフォントの輪郭が気になってしまう場合があります。また、白色をRGB(赤/緑/青)の3色で表現するため、文字以外の白い部分の色も、ドット感をもって表示されてしまいます。

有機ELと電子ペーパーの拡大比較

電子ペーパーにも解像度はありますが、有機ELや液晶のように、目を近づけても明らかなドットは見えません。仕組み的に、ドットをオンオフするのではなく、インクを詰め込んだマイクロカプセルを帯電させることで、白と黒を切り替えているからです。白い部分についても、紙のようにフラットに表示されていることが、比較からも分かると思います。

ドットが見えないことで、デジタル機器でありながらも「印刷された紙」のような体験が得られます。つまり、電子ペーパーを搭載する電子書籍リーダーは、スマートフォンとは異なり、紙をシミュレートして読めるデバイスともいえるのです。

1度の充電で長く使えるバッテリー

電子書籍リーダーのメリットに、バッテリー持続時間が長いというポイントもあります。

スマートフォンなどに搭載する液晶や有機ELは、表示のために常に電力が必要です。液晶はバックライトの点灯だけでなく、表示させたいドットに電力を与え続ける必要があります。また有機ELでも、ドットを点灯させるため、常に電力供給が必要です。

一方、電子ペーパーでは、表示を書き換えるときにしか電力を消費しません。文字などを表示させたあと、次に別の文字を書き換えるまで、表示を維持させるために電力は不要なのです。実際、電子書籍リーダーのスペックでは、1ヶ月以上の電池もちと紹介されているモデルがほとんどです。

スマートフォンと電子書籍リーダー

また先述のように、電子ペーパーは環境光によって、ディスプレイを明るく表示できます。この場合、書き換えるとき以外に電力を使うことがないため、ディスプレイとしては極めて低消費電力なのです。

なお、電子書籍リーダーを暗いところ使う場合、フロントライトを発光させると思います。この場合であっても、他のディスプレイよりも低消費電力です。液晶ではバックライトを発光させますが、裏からの発光でも明るさを確保するために強力なライトが必要だからです。フロントライトの場合は遮りものがないので、そこそこのライトでも明るさを確保できます。

ちなみに、有機ELは発光させたドットのみしか電力を消費しないので、ダークモードを使う場合、大幅な省電力化が可能です。逆に液晶ではダークモードでもバックライトを発光させる必要があるので、電力消費は変わりません。むしろ液晶は電力をかけた部分が黒くなる(光を通さなくなる)ので、ダークモードのほうが電力を消費したりします。

サービスの互換性はないのがデメリット

電子書籍リーダーのデメリットも挙げておくと、対応するプラットフォームが限られるということが、購入前に注意するべき点です。

一番ユーザーの多い電子書籍リーダーは、Amazonの「Kindleシリーズ」、次に楽天の「Koboシリーズ」だと思いますが、両者とも各プラットフォームの専用デバイスで、その他のサービスには使えません(過去にSONYも発売していましたが撤退してしまいました)。

一方で電子書籍は、honto、BOOK WALKER、Reader Store、Fujisan.co.jp、ebookjapanなど、多くのプラットフォームから購入できます。こういったサービスで購入した電子書籍は、KindleやKoboでは読めません。

KindleやKoboストアの品揃えは豊富なので、読みたい本が売っていない場合は少ないとは思いますが、これまで購入した書籍が活かせないのは面倒なところ。場合によっては、スマートフォンとの二台持ちになりかねません。

なお、BOOXというブランドが、電子ペーパー搭載のAndroidタブレットを販売していたりもします。Kindleに比べるとマイナーな選択肢ですが、Android用のアプリが使えることもあり、一定のファンがいるようです。

本を読むなら「電子書籍リーダー」を推したい

電子書籍リーダーのメリットをまとめると、周囲の明るさに関係なく使用でき、ドットが見えづらく、バッテリーが長く持つということです。

これが何をもたらすかというと、デジタル機器でありながら「まるで紙のような表示」が楽しめます。もちろん紙と全く同じではありませんが、かなり紙に近い表示が可能です。

Kindle Oasisの俯瞰写真

もちろん、Kindle端末であればKindleストアの書籍しか読めないといったデメリットはありますが、品揃えが豊富なので、筆者としてはあまり気になりません。もし汎用性を気にされる方は、BOOXというブランドから電子ペーパーのAndroidタブレットもラインナップされています。

また、個人的に推したいポイントとして、「読書に集中できる」という点があります。スマートフォンではつい別の作業をやりたくなりますが、電子書籍リーダーは本を読む以外の機能がないため、気を取られるという心配はありません。

こういったことからも、筆者としては、電子書籍を読むなら「電子書籍リーダー」がおすすめ。手軽さについてはスマートフォンが優位ですが、しっかりと読書をしたいのであれば、電子書籍リーダーならではのリッチな体験を得られるはずです。