ソニー「WF-1000XM4」レビュー。これを選べば後悔なしの完成度

WF-1000XM4のケースとイヤホン

ノイズキャンセリング搭載の完全ワイヤレスイヤホンが人気です。その中に、ソニーから待望の新モデル「WF-1000XM4」が登場しました。

発表直後から大きな注目を浴びており、発売から1ヶ月経ってもなお、在庫が追いつかない状況。筆者は発売前日の6月24日に注文しましたが、実際に入手できたのは、その約1ヶ月後でした。発売から2ヶ月ほど経った8月19日時点でも、納期はブラックが5週間、プラチナシルバーが3週間というほどの人気ぶりです。(注:すでに現在は在庫不足が解消されています)

早速試してみた感想としては、「何も考えずにこれを選んでおけばいいのでは」というほどの完成度です。ノイキャンが強力で音質も良く、前モデルの不満点であった、ケースサイズやバッテリー持続時間なども改良されています。

値段は33,000円(税込)と、高級完全ワイヤレスイヤホンとして一般的な価格ですが、とはいえ安いかといえばそうではなく、少し勇気のいる値段です。はたして、その価値はあるのか。これから確かめていきましょう。

ソニーのノイキャン完全ワイヤレス 第3世代モデル

まず、これまでの歴史に軽く触れておきます。ソニーは2017年に、同社初の左右分離型イヤホン「WF-1000X」を発売。最高クラスのノイズキャンセリングを謳っていたモデルでしたが、ソニーやボーズなど、当時主流のヘッドホンタイプには遠く及ばず。完全ワイヤレスイヤホンの黎明期ということもあり、バッテリー性能や接続安定性という意味でも、課題の残るモデルでした。

そこから2年が経ち、2019年には「WF-1000XM3」が登場。ナンバリング的にXM2を飛ばしたことになりますが、この名に恥じないモデルに仕上がりました。初代の課題であった部分がほぼ解消されたといってもよく、高い完成度を実現。ノイズキャンセリング性能が大幅に向上したほか、左右独立接続によって高い安定性を確保するなど、高性能でありながら、スキのない基本性能が魅力です。

ちょうど当時、少し遅れてアップルから「AirPods Pro」が登場したことも、話題性を大きくしたと思います。ノイズキャンセリングは2者とも高い水準でしたが、音質ならソニー、外音取り込み性能や使い勝手ならアップルという図式になり、そのキャラクター性の違いで多くのユーザーが悩み・比較していました。

ここで完全ワイヤレスイヤホン+ノイズキャンセリング機能という組み合わせが注目され、その後、多くのメーカーが追従しています。当初はボーズやパナソニック、Jabraなどの高級モデルが中心でしたが、ここ1年はTaotronics、Anker、QCYといったコスパ志向のブランドから、1万円切りかつノイズキャンセリング搭載のモデルが増えてきました。

2年前に登場したWF-1000XM3は、現在でも第一線を張れるレベルです。しかし、この2年の間に開発した新技術や、ユーザーからの要望を盛り込んで、さらに高みを目指したのが、今回のWF-1000XM4。ほとんど欠点が見つからないほどの進化・改善が行われたモデルです。

ケースの小型化が嬉しい

WF-1000XM4のケース上面

個人的に嬉しい改良点が、ケースが小型化されたということです。前モデルでは、完全ワイヤレスイヤホン全体で考えても、やや大きめの部類でした。持ち運びの多い完全ワイヤレスイヤホンにとって、ケースの大きさは重要です。

新モデルのケースサイズは、実測で約40mm(高さ)×65mm(幅)×30mm(奥行)。片手で包めるくらいの小型サイズで、常に持ち運んでも邪魔にならない大きさに。

材質についても、従来から大きく変わっています。WF-1000XM4では、マット調のプラスチックで、サラサラした感触です。従来はラバーのようなコーティングがされており、傷や汚れが付きやすい表面でした。特にプラチナシルバー色では、しばらく使っていると表面が黒ずんで来るようで、中古を探すと汚れたような個体をよく見受けます。

WF-1000XM4の充電ケースを開けた様子

また前作では、蓋の部分が光沢感のある金色でしたが、これも傷が付きやすかったようです。発売直後に、傷つき防止の保護フィルムがサードパーティーから登場したほど。今回はコーティングもなく、蓋も含めて同じ素材で統一されているので、見た目的な耐久性が期待できます。しばらく使っていかないとわからない部分ですが、劣化する素材ではなさそうなため、長く使っても、ある程度は見た目を保てそうです。

なお、傷を気にする方には、サードパーティーから保護ケースが発売されています。価格は600~2,000円程度。筆者はAmazonで590円の安物を見つけて試してみましたが、これでも十分に使えそうです。このケースについては、別記事で詳しくご紹介しています。

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イヤホンも小型化で“耳から飛び出しにくい”

ケースだけでなく、イヤホンの外観についても大きく変わりました。流線型にて構成されたデザインで、黄色のマイク部がアクセントになっています。ハウジングの外側にメーカーロゴが置かれる場合も多いですが、側面に控えめに描かれる程度なので、シンプルさが際立っている印象です。

こういったモデルは、新旧でコンセプトが共通の場合が多いですが、WF-1000XM4では、全く別物といっていいほど。しかし、そのおかげで使いやすさも上がっています。こういった姿勢は、ソニーらしさを感じる部分だったりして、好感がもてる部分でもあります。

WF-1000XM4のイヤホンを並べた様子

さて、イヤホンのデザインが変わり、本体がコンパクトになりました。完全ワイヤレスイヤホンでは、1つの本体に、バッテリー、アンテナ、基板、ドライバー、マイクなど、多くの部品を詰め込む必要があります。特にノイズキャンセリングでは、マイクを増やしたり、プロセッサーなどを搭載する必要があり、必然的に大きくなりがちです。

WF-1000XM4では、技術の進歩もあるのか、かなりの小型化を実現。装着すると耳に収まり、あまり飛び出さないので、見た目的にもスマートです。また飛び出していると、ぶつかったり引っかかったりして取れる危険性がありますが、そういったことも防げます。

WF-1000XM4のイヤホン部のアップ

また装着感については、耳のくぼみの中に収まってくれるので、勝手に取れそうという心配がありません。相性はあると思いますが、個人的には2時間くらい連続で装着していても、痛くなるようなことはありませんでした。ただしこれ以上になると、少しかゆくなってきて、休憩したくなります。

前モデルと比べるとホールド感が高く、かつ快適に感じます。一方で、イヤーピースと耳の形状の両方で本体をホールドする設計で、耳への接地面積は多めなので、常に装着できるかというと、そうではないと思います。AirPods Proのような軽い装着感ではないため、長時間装着したい方は、事前にしっかりとテストできるのであれば、試してからのほうが良さそうです。

パッケージにも注目。コンパクトでエコなデザイン

WF-1000XM4のパッケージ

機能紹介の前に、パッケージにも触れておきましょう。一見してすぐに分かるほどのコンパクトサイズで、大きさはこぶし大くらい。一般的なデジタル機器の箱と比べると小さく、保管する場合でもじゃまになりにくそうです。

筆者は少し使って合わない場合、ヤフオクやメルカリで手放すことも多く、基本的に箱はとっておく事が多いです。あくまで個人的な感想ですが、箱を小さくしてくれるのは、地味に嬉しいポイントです。

WF-1000XM4のパッケージ拡大写真

このパッケージには、ソニーがオリジナルでブレンドした再生紙が使われています。材料はサトウキビや竹、回収した再生紙など。プラスチックをほとんど使用しないことで、環境に配慮しています。

見た目的にはごく普通の厚紙に見えますが、触ってみるとすべすべとして気持ちよい素材。今後も小型製品については、環境に配慮したパッケージを採用していくそうです。

WF-1000XM4のパッケージを開けた状態

なお、開封してみると、先述のようにプラスチックがほとんど使われていません。付属品のイヤーピースとケーブル、説明書、そして本体がパズルのように重ねられている状態です。

本体もビニールで覆われているわけではなく、紙の帯が巻かれているのみ。徹底してプラスチックを使わないこだわりが感じられます。

自然で強力な“ノイズキャンセリング”

WF-1000XM4では、アクティブノイズキャンセリング機能(ANC)も進化しました。これは、イヤホンで外部の音を収集し、逆位相の音波をぶつけることで、ノイズを打ち消すという技術です。

ノイズキャンセリングについて少し掘り下げると、効果が高い順に、外側にマイクを設置する「フィードフォワード方式」、内部にマイクを設置する「フィードバック方式」、これらを2つ組み合わせた「ハイブリッド方式」があります。本機はこのうち、もっとも効果の高いハイブリッド方式を採用しています。

ハイブリッド方式は、外側のマイクでまずノイズを打ち消し、その打ち消したあとに残ったノイズを、さらに内側で捉えて打ち消すという、2段構えの方式です。より高いキャンセリング性能を狙えますが、そのぶん複雑になるので、高級機を中心に採用されています。本機では、内部のマイクは見えませんが、外側のマイクについては、ゴールドで強調されたデザインで、すぐにわかります。

前モデルでもハイブリッド方式でしたが、今作では、マイクで捉えた信号を処理するプロセッサー部分が新しくなり、さらに性能が向上しました。具体的には、統合プロセッサー「V1」を搭載することで、高域のノイズをより打ち消せるようになっています。

WF-1000XM4のイヤホン部のアップ

V1は、基本的なBluetooth SoCに加えて、ノイズキャンセリングプロセッサーを1つにまとめたというチップです。これによるメリットとして、1つのチップで済むので小型化が狙えます。また、プロセッサーの処理速度が向上したことにより、高域ノイズに強くなったとしています。

少し難しい話かもしれませんが、ノイズキャンセリングにおいて、処理速度や遅延は重要です。逆の波で打ち消すという仕組み上、遅延があるほどノイズが消せなくなってしまいます。さらに、高域のように周波数の高い波だと、その分多くの波を処理する必要があり、性能が低いプロセッサーでは、処理が追いつかなくなってしまいます。これが、高域ノイズが消しにくい理由です。

多くの完全ワイヤレスイヤホンでは、「低音は消えるけど、高音はあまり消えない」というモデルがほとんど。話し声やアナウンス音声、電車の風切り音などが、この “消えにくい音” にあたります。声が聞こえないと安全に関わる面もありますが、正直なところ、ノイキャンイヤホンよりも、高遮音イヤホンのほうが静かに感じるモデルも少なくありません。

また、ノイズを音で打ち消す以上、再生するドライバー自体の性能も重要です。一般的に口径が大きいほど低音再生で有利になりますが、本機のサイズは前モデルに引き続き、完全ワイヤレスイヤホンとしても小さめの6mm。ただし、特性向上に加えて磁石の体積を増やすことで、低域の能力を向上しています。これによって、低音側のノイズキャンセリング性能も高まったとのことです。

強力だけど圧迫感のない“自然なノイキャン”

実際にノイズキャンセリングを試すと、効果は強力そのもの。一方で、耳に圧迫感や閉そく感がなく、自然なことに驚きました。また動作時のホワイトバランスも少なく、長年ノイキャンを開発してきた、ソニーの技術力の高さが伺えます。

ノイズキャンセリングが動作しているかわからず、オフにしてはじめて、騒音の大きさに気がついたほど。集中したいときの耳栓代わりに、長時間使ってもいいくらいの快適さです。

たとえばキーボードのタイプ音は、無音でもあまり聞こえないくらいにまで消してくれます。小さな音量で音楽を鳴らしてしまえば、全く聞こえなくなるレベルです。エアコンの風量を最大にして近くに立ってみましたが、こちらも音楽を鳴らしていない状態で、かすかに聞こえる程度のほぼ無音レベルになります。

意外なのが、どんなに強力な耳栓でも防げない、体内の音までキャンセリングしてくれることです。耳をふさぐと、ゴーッという、血管に血液が流れる音が聞こえるのですが、この音もかなり抑制してくれます。

電車でも試してみました。電車内のアナウンスは聞こえるのですが、ノイズキャンセリングをオフにしてみると、音量が一段階ほど下がった印象。低音についてはかなりカットしてくれていて、ゴーッという音は、ほとんど聞こえません。

筆者は音量小さめで聴くタイプなのですが、ノイズキャンセリングを使っている状態では楽しめる音量であっても、ノイズキャンセリングをオフにしてみると、ボーカルの歌詞が聞こえなくなるほど。Androidの音量でいうと、2段階くらい上げないと、同じように聴くことができませんでした。

電車だとつい音量を大きくしがちですが、ノイズキャンセリングを使うことで、音量を下げても快適に音楽を楽しめます。ヘッドホン難聴を防ぐセーフリスニングという意味でも、ノイズキャンセリングは、やはり魅力的です。

なお、アプリから設定できる機能として、「自動風ノイズ低減」というものがあります。外側にマイクを設置していることから、風がイヤホンにあたるとガサガサッという音が出てしまうのですが、これを防ぐ機能です。

使った印象としては、ある程度風が強くなった際に、機能が有効になるといった感じ。少しガサガサッとした音がしたあとに、静かになり切り替わったことがわかります。一方で、外側のマイクをオフにする制御なので、ノイズキャンセリングの効果は落ちてしまう模様です。

今回は歩道を歩きながら検証したのですが、明らかに聞こえるノイズが多くなり、サーッというホワイトノイズも聞こえます。電池消費も増えますし、ある程度の強風でしか有効にならないので、基本的にはオフでいいかもしれません。

イヤーピースも新型に。遮音性やフィット感向上

静かな状況で音楽を楽しむには、イヤホン自体の遮音性も重要です。WF-1000XM4では、新開発の「ノイズアイソレーションイヤーピース(EP-NI1000)」が採用され、遮音性や装着感が追求されています。

‎ノイズアイソレーションイヤーピースを並べた様子

このイヤーピースは、独自開発のポリウレタンフォームを外側に、ステムの部分には従来のシリコンを組み合わせたもの。外側が発泡素材になっていてスポンジのように変形して、耳にフィットするのが特徴です。耳に密着してくれるだけでなく、素材自体が音を吸収することもあり、高い遮音性も狙えます。

フォームタイプのイヤーピース(コンプライなど)は、耳栓のように、指でつぶしてから装着するのが一般的です。しかしこのソニーの新作は、通常のシリコンイヤーピースのように装着できるため、気軽に装着できるので、とても気に入りました。またフォームタイプだと、高域が吸収されて音に影響がでるのですが、音が通る部分がシリコン素材になっているため、そういった心配もないようです。

‎ノイズアイソレーションイヤーピースの拡大写真

WF-1000XM4にはイヤーピースが3サイズ(S/M/L)付属していますが、どれを選べばいいかわからないという方も多いと思います。そういったユーザー向けに、アプリから利用できる装着&サイズ判定機能に対応されています。

これは過去モデルになかった機能で、購入後にまずは行ってほしい作業だといえます。このようなテスト機能は、一部の他メーカー製品にもありますが、正しく装着できているか確かめるのみで、サイズ判定は珍しい機能です。

イヤーピースのサイズ測定画面

驚いたのが、実際に思っていたサイズと、アプリで推奨されたサイズが違ったということです。標準のMサイズでしばらく快適に使っていましたが、しばらくしてサイズ判定機能に気がつき、試したところ、Sサイズが最適でした(なお装着テストでは、Mサイズでも合格でした)。

騙されたと思いながらもSサイズを使ってみたところ、これまでMサイズで感じていた外耳道への圧迫感がなく、さらに快適になりました。遮音性が高い=耳への圧迫感というイメージだったのですが、Sサイズでも遮音性が落ちることもなく、問題ないようです。改めて、サイズ選択の大切さを実感しました。

イヤーピースの判定が終わった状態

なお、前モデルのWF-1000XM3では、レビューで「付属イヤーピースが合わない」という事例がいくつかあったようです(この場合は社外品で解決できます)。ほかにも、「ノイズキャンセリングが全然効かない」というものもあり、イヤーピースが合っていないと思うような事例も見かけました。推測ですが、こういったことを防いで性能を十分発揮できるよう、新モデルではイヤーピースの対応性を高め、さらにテスト機能も導入したのだと思います。

連続再生時間が改善。タッチコントロールも快適

WF-1000XM4のバッテリー持続時間は、ノイズキャンセリング使用時でイヤホン単体が8時間、ケース併用で24時間です。ケースでは2回のフル充電が行なえます(なお前モデルでは、イヤホン単体で6時間、ケースでは3回の充電が行えて、トータル24時間でした)。また、ノイズキャンセリングをオフにすると、イヤホン単体12時間、ケース併用で36時間の再生が可能です。

充電端子はUSB Type-Cなので、Androidスマートフォンなどと充電ケーブルが使い回せます。たまに低電流モードでないと充電できないモデルもあるのですが、本機はそういったことはなく、スマホ用の急速充電器で充電可能です。

WF-1000XM4の充電端子

ほか、急速充電機能を搭載しているので、5分の充電で60分の再生が可能です。朝通勤前にバッテリー切れに気がついても、5分あれば、片道分は確保できるわけです。さらにワイヤレス充電にも対応しているので、Qi対応の充電器があれば、置くだけでチャージが行なえます。

操作については、イヤホンのハウジングをタップする方式です。タップした瞬間にピッと音がなり、アナウンスで知らせてくれます。たとえば左をワンタップすると、ノイズキャンセリングモードの切り替えが可能です。

操作はアプリからカスタマイズできます。左右それぞれで、4つのプリセット(外音コントロール/再生コントロール/音量コントロール/割当なし)から選ぶかたちです。詳細な設定は行なえず、音声アシスタントは再生コントロールの長押しのみだったりと、小回りはききません。人によっては困りそうです。

WF-1000XM4のイヤホン部裏面の拡大

ハウジングの内側に装着検出センサーを搭載しているので、着脱によって曲の自動再生・停止が行えます。それに、装着状態が検出されていない状態では、タッチコントロールが無効になるようです。装着時にハウジングをうっかり触ってしまい、曲が再生されたり設定が変わったりすることはないので、安心して使えます。

また、Google Fast Pairに対応しているので、初回の接続もかんたんです。Androidスマートフォンに近づけるだけでポップアップされるので、Bluetooth設定を開かずとも、セッティングが行なえます。また、Windows10でもガイダンスがポップアップする、クイックペアリングに対応しています。

WF-1000XM4でクイックペアリングをしている様子

細かいポイントですが、複数デバイスをかんたんに切り替えられるのも、大きなポイントです。家でも完全ワイヤレスイヤホンを使いたい方も多いと思いますが、その場合はスマートフォンだけでなく、PCやタブレットでも使いたいと思います。

多くの完全ワイヤレスイヤホンでは、デバイスを切り替える際、接続中のデバイスでBluetoothをオフにするか、接続を切断してから、次のデバイスで接続する必要があります。しかしWF-1000XM4では、次に繋ぎたいデバイスの設定画面から「接続」を押すだけで、前のデバイスから勝手に切断され、切り替わってくれます。

たとえば、ノイズキャンセリング対応の人気モデルで、ボーズ「Quiet Comfort Earbuds」がありますが、前のデバイスをいちいち切断しないと繋ぎ変えられない仕様です。パナソニック「EAH-AZ70W」やAirPods Proなどは、WF-1000XM4と同じ仕様ですが、高級モデルであっても、切り替えが面倒なモデルが大半だったりします。

長く聴いていたい“自然なサウンド”

音質について一言でまとめると、「自然で心地よい良質なサウンド」です。ドンシャリのように強調される部分があまりなく、楽曲の良さをストレートに楽しめます。かといってモニター系かというとそうではなく、音楽を楽しんで聴けるような、絶妙な音作りです。

サウンド面でも素性のよいWF-1000XM4ですが、オーディオ的なハイライトとして、高音質なLDACコーデックに対応したところも注目です。コーデックとは、Bluetoothで音声を伝達する際に必要な仕組みですが、本機ではSBC/AAC/LDACの3種類に対応しています。

SBC→AAC→LDACの順に音がよく、LDACではCDを超えるハイレゾ規格に対応しています。Androidでは3つとも対応しているモデルが多いですが、iPhoneなどiOS端末では、AACのみをサポート。Windowsでは、基本的にAACとLDACに対応していないので、SBCのみが利用できます。

WF-1000XM4をスマートフォンと並べた様子

せっかくなので、LDACを使用して、宇多田ヒカルのアルバム『One Last Kiss』から、ハイレゾ形式で「Beautiful World (PLANiTb Acoustica Mix) -2021 Remastered-」(96kHz/24bit)を聴いてみました。

一聴して「ワイヤレスの音質ではない」と感じるほど。立体感があり、音源の位置をしっかりと把握できるような定位感を持っています。音場はイヤホンとしては広めで、頭の中で鳴っている印象も薄いです。

また、ピアノの音がクリーンです。ハイハットの硬質感や、スネアドラムの空気感も伝わってくるほどで、ドライバーがもつ、レスポンスのよさを感じられます。

続いて、YOASOBI「三原色」(48kHz/24bit)では、音数の多い序盤から、各楽器の音が混ざらず、しっかりと描き出してくれます。ハンドクラップの音もキレがよく、ボーカルも素直に再生します。

これはKing Gnuの「千両役者」(48kHz/24bit)でも同様でした。この曲も音数が多く、イヤホンによっては音が混ざって聞こえるのですが、そうはならず、すべての要素が描き出されています。またベースラインもしっかりと再生してくれるので、リズムに乗りながら曲を楽しめます。

WF-1000XM4のケースを開いて正面においた様子

サウンド傾向としては、中低域がやや多めです。一方で高域が控えめなので、女性ボーカルについては、もう少し抜けてくれたほうが、透明感が引き立つように感じました。

とはいえ、音のバランスが絶妙で、各要素はあまり気になりません。高域が控えめというのもメリットで、刺激が少ないので、長時間でも疲れにくいチューニングです。むしろ暖かみがあって心地よく、これはこれでアリ。解像感や定位もしっかりしており、もちろん高級な有線イヤホンなどには劣りますが、並の有線イヤホンを凌ぐほどのレベルです。

コーデック/DSEEによる音の違いは

WF-1000XM4のイヤホンを手に持った様子

コーデックの違いによる音も確かめてみました。LDACからAACに切り替えると、音の輪郭がぼやけてしまい、SBCでは、これがさらに顕著になります。細かいニュアンスが聴こえにくくなるだけでなく、解像感が落ちて、鮮度が下がるようなイメージです。

SBCからLDACに切り替えると、伴奏の解像感が一気によくなり、ボーカルにも立体感が出てきます。やはり、LDACは圧倒的です。なお、これはハイレゾ音源を再生する場合だけでなく、ストリーミング配信の再生でも同様の傾向でした。

またWF-1000XM4には、音源復元技術「DSEE Extreme」が搭載されています。これはAIを活用することで、MP3音源でもハイレゾ級にアップスケーリングできるという技術です。

実際に試したところ、ハイレゾ級かというと疑問ですが、明確な違いはありました。LDACの状態では効果が分からなかったのですが、特にSBCだと違いが大きく、サウンドが一段上がる感覚です。音が締まって繊細になり、立体感や解像感が高まるほか、音に広がりが生まれる感覚です。

映像視聴でも使えるか

音楽だけでなく、YouTubeなどの映像視聴用途でも、十分に楽しめます。特に音質のよさが際立っており、YouTuberが使っているマイクの違いが、はっきりと分かってしまうほどです。

Bluetoothだと遅延が気になるところですが、Androidと接続した場合はOS側で補正がかかるのか、YouTubeでほとんど遅延が感じられません。なお当たり前ではあるのですが、スマホゲームではやはり厳しく、タップしてからシャンが大きく遅れて聞こえます。

また、Windowsと接続した場合は遅延が大きく、動画ではリップシンクが若干ずれてしまいます。口元を凝視していなければ気にならないレベルではありますが、少し気になるところです。

まとめ:買って後悔なしの完成度

WF-1000XM4のケースとイヤホン

冒頭に述べたとおり、ノイズキャンセリング機能つきの完全ワイヤレスイヤホンで悩んでいる方は、WF-1000XM4を選べば後悔しないレベルだと感じます。

全体的な完成度が高いし、ノイキャンの効果も強力だし、そして音質も良い。特にLDACだと、並の有線イヤホンすら超えるようなサウンドを奏でてくれます。それでいて、気軽に使えるという点も魅力です。

完全ワイヤレスイヤホン全体からすると高めの価格ですが、実際に購入してみて、それだけの価値があると感じています。よく音楽を聴く方、テレワークでビデオ通話をする方、スマートフォンで動画を視る方、通勤電車を快適に過ごしたい方など、多くのユーザーに良質な体験をもたらしてくれるアイテムです。