Anker「Soundcore Life A2 NC」レビュー。ノイキャン搭載で1万円切り

Ankerから、アクティブノイズキャンセリング対応の完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore Life A2 NC」が発売されました。早速購入してみましたので、こちらレビューしていきたいと思います。

結論としては、この価格でノイズキャンセリングを搭載しており、かなりコストパフォーマンスが高いと思います。耳への圧迫感も少なく、かといって耳から外すと騒音に驚くほどです。これからはノイズを気にせず、あらゆる場面で快適なリスニングを楽しめるはず。買ってよかったといえます。

Life A2 NCの価格は9,990円(税込)です。同時発売として上位機種「Soundcore Liberty Air 2 Pro」(12,980円/税込)も登場しましたが、Life A2 NCは上位機同様の「ウルトラノイズキャンセリング」を搭載しながらも、価格を抑えたという位置づけのモデルです。

同時発売「Soundcore Liberty Air 2 Pro」との違いは?

外観から見ていきましょう。本体のほか、付属品として5サイズのイヤーピース(XS/S/M/L/XL)と3サイズのイヤーウィング(S/M/L)、充電ケーブル(USB A to C)が同梱されています。

一般的なイヤホンのイヤーピースはS/M/Lの3サイズ付属することが多いのですが、より小さいサイズと大きいサイズが用意されているので、より多くの方にフィットできると思います。ノイズキャンセリング性能を活かすには最適なイヤーピースが必要なので、そういった同社の配慮なのでしょう。

個人的に嬉しいのがイヤーウィングの存在です。通勤用として使用するので、もし途中で外れてしまったら紛失の可能性があります。イヤーピースのみで固定するイヤホンも多いですが、イヤーウィングがあることでよりしっかりと固定できるので、個人的には優先度が高い部分です。このあたりもLife A2 NCを選んだ理由だったりします。

イヤホン本体の大きさは小さめで、メタリックのラインがアクセントです。上位モデルのLiberty Air 2 Proはステムが長く、AirPodsのような “耳うどん” になっています。ブラックとホワイトの2色がラインナップされていますので、iPhoneユーザーにはこちらのほうが人気なのかもしれません。個人的には、ステムが長いとぶつけて取れてしまうこともあり、Life A2 NCのタイプのほうが好みだったりします。

「Soundcore Liberty Air 2 Pro」(出典:Anker直販ストア)

またLiberty Air 2 Proには、 10層のナノレイヤーを重ねたという11mmの「PureNoteドライバー」を備えていますが、Life A2 NCは通常の11mmドライバーです。そのほか、Liberty Air 2 Proはユーザーの聴覚に合わせて調整する「HearID 2.0」対応や、ワイヤレス充電を搭載。音質を追求しつつ高機能化している部分が、価格の差分なのでしょう。

防水性能に関しては、Life A2 NCがIPX5に対応していますので、汗やちょっとした雨でしたら耐えられそうです。ここは上位モデルと性能が逆転していて、Liberty Air 2 ProがIPX4なのでご注意ください。

筆者は通勤用途としてLife A2 NCを購入しました。電車内の騒音はかなりうるさいので、そのノイズを抑える目的です。音楽はBGM程度の音量ですし、自宅では音質特化の完全ワイヤレスイヤホン「TWS-04K」や有線イヤホンを愛用しています。このように使い分けを想定していますので、今回はノイズキャンセリング用途として割り切って安いモデルを選んだ格好です。

独自の「ウルトラノイズキャンセリング」

完全ワイヤレスイヤホンの最近のトレンドが、アクティブノイズキャンセリング機能です。詳しい部分は別記事にて解説していますが、アクティブノイズキャンセリングとは、逆位相の波をぶつけることでノイズを打ち消すという技術です。

安価なアクティブノイズキャンセリング対応イヤホンでは、外側にマイクを設置して、その音を元に逆位相の波を生成します。しかし高級モデルではハイブリッドといって、内側にもマイクを設置することで、外側のマイクでノイズキャンセリングした音に対して、さらに内側のマイクでも追加でキャンセリング。つまり、より低減効果の高いノイズキャンセリングが実現できるわけです。

Life A2 NCでは、1万円以下という価格ながらも、このハイブリッド方式の独自技術「ウルトラノイズキャンセリング」を採用しています。これはLiberty Air 2 Proでも同様ですが、片側あたり3つのマイクを搭載。おそらく内側に1基、外側に2基を備えていて、外側の片方は通話用のマイク、ほか2つはノイズキャンセリング用だと思われます。

また、ノイズキャンセリング用のマイクを活用することで、イヤホンを付けたまま外の音を聞ける「外部音取り込みモード」にも対応しています。試したところ、AirPods Proのような自然な聞こえ方ではありませんが、付けたままの会話にも困らない水準の聞こえ方でした。アプリからは人の声やアナウンスといった音声を強調する「音声フォーカス」も切り替えられます。

ウルトラノイズキャンセリングでは、環境に合わせた3種類のノイズキャンセリングモードが用意されています。屋外/交通機関/屋内の3種類が用意されていて、アプリ上から切り替える仕様です。欲をいえば、HUAWEI FreeBuds Proのようにオートモードを搭載してほしかったなと思います。

ノイズキャンセリングの効果を試してみました。家の中の騒音、たとえばエアコンでは付いているのかもわからないほどノイズが消えてくれます。

特に低域についてのキャンセリング性能が優れているようで、イヤホンを外すと「こんなにうるさかったのか」と思うほどです。手をグーにして木の机をドンドンと叩いてみると、ほとんど音がしません。一方で高域は苦手らしく、掃除機ではゴーッという音は聞こえなくなりましたが、キュイーンという高い音が残りました。キーボードのタイピングも同じく、爪がキーにあたった際のカチャカチャした音は厳しいようです。

電車内でも試してみました。印象としては、やはり「低域はしっかりと効く、高域の効きは控えめ」です。低域については、ゴーッという音がほぼ消えてくれます。いっぽうで、車内アナウンスは残してくれるので、聞き逃す心配はありません。アナウンスの下の方の帯域が削られ、軽い声になる印象でしょうか。

電車内で気になったのは、風切り音への対応です。エアコンからの風くらいだと気にならないのですが、コロナ禍で窓が空いていると強い風が吹いてきます。このような風だと、強風下で動画撮影したときの音声のように、ザザザザッという激しいノイズが聞こえます。これは結構うるさい大きさで、個人的には、オフに切り替えたくなるほどです。ソニーのWF-1000XM3でも問題になっているように、風切り音に弱い機種が多いのですが、屋外で使う予定のかたは気をつけたほうが良いかもしれません。

また、付属のイヤーピースは遮音性が少なめなので、より遮音性が高いものに交換するとよいかもしれません。イヤーピースのサイズが一般的な有線イヤホンと同じなので汎用性が高いですし、やや潰れてしまいますがケース内にも収まります。ちょうど手持ちに低反発タイプのイヤーピースがあったので付け替えてみましたが、遮音性が格段に向上しました。新たに購入する場合はコンプライや、デコニオーディオ「Bulletz」あたりがオススメです。ケースへきれいに収めるなら、なるべく「完全ワイヤレス用」のものを選ぶとよいでしょう。

イヤーピースで遮音性を高めることで、高域ノイズを格段に抑えることができます。逆に低音については遮音性を高めても振動で体から伝わってきますので、こちらはアクティブノイズキャンセリングの出番です。もし効果が弱いな?と思った方は、イヤーピースを交換することをおすすめいたします。

アプリのスクリーンショット

ノイズキャンセリングの各モードを切り替えてみると、確かに違いがあります。アプリの説明によると、「交通機関」がエンジンや路面騒音などの低周波、「屋内」がカフェなど室内空間での周囲の声や中周波ノイズ、「屋外」が外出先での周囲のノイズ低減に効果的だそうです。

試した印象では交通機関が一番キャンセリング性能が高い印象です。一方で「交通機関」はホワイトノイズがやや多く、ホワイトノイズの少ない「屋内」と比べると、静かな室内ではやや気になります。ノイズキャンセリングでありがちな圧迫感についてはどのモードも感じず、常にオンにしていても問題なさそうです。

先述したようにアプリからモードの切替が可能ですが、これをこまめに切り替えるのは面倒です。イヤホンのタッチコントロールはアプリからカスタマイズできるのですが、ノイズキャンセリングのオンオフはできてもモード切替はできません。もう少し気軽に切り替えられれば良いのになと感じました。

再生時間について

再生時間は、イヤホン単体で7時間、ケースを組み合わせることで最大35時間です。ノイズキャンセリング使用時には若干短くなり、イヤホン単体で6時間、ケース併用で30時間。充電端子にはUSB Type-Cを採用します。

ノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホンは各社からラインナップされていますが、たとえばソニー「XF-1000XM3」は6時間、アップル「AirPods Pro」は4.5時間、ボーズ「QC Earbuds」は5時間です。Life A2 NCの6時間という数字は、より高価格帯のモデルと比較しても遜色ない水準だといえます。

なお上位機のLiberty Air 2 Proはイヤホン単体で6時間、ケース併用で21時間(ともにアクティブノイズキャンセリング時)となっています。Life A2 NCのほうがケースが大きい分、バッテリー容量も大きいようです。これは嬉しいポイントです。

また充電時間は2時間ですが、10分間の充電で約1.5時間再生できるという、短時間充電にも対応します。ワイヤレス充電には対応しないので、もしワイヤレス充電をしたい方は、Liberty Air 2 Proを候補に入れてもよいと思います。

Souncoreらしい「ドンシャリサウンド」

最後に音質もテストしてみます。Bluetoothのバージョンは5.0で、対応コーデックはSBCとAACの2つです。同社の過去モデルではaptX対応も多かったのですが、省かれたのはAndroidユーザーとしてはやや残念。とはいえ、テストではAACで接続しましたが、特に不満はありませんでした。後述のように遅延も少ないので、aptX非対応でも困ることはなさそうです。

音質の傾向を一言で表すと「ドンシャリ」です。高域と低域がやや強調されているかたち。低域はややブーミーな鳴り方ですが、ドライバーが11mm径と大きめなので無理をしている印象はありません。解像度に関してはこの価格帯では十分な水準で、音場に関しても狭いということはないので、ノイズキャンセリング搭載であることを考えると優秀なサウンドだと思います。

ブルーノ・マーズ「Just the Way You Are」では、一定間隔でバスドラムのリズムでノリよく再生してくれます。ボーカルにはやや軽さがありますが、一方で聞き取りやすく、外出先で聴くにはむしろこのほうが良いかもしれません。イコライザーでフラットに設定すると低音は引き締まり声に厚みが出てきますが、一方で立体感がやや失われてしまいます。デフォルトで22種類のプリセットが用意されていますが、一通りためした印象では、デフォルトが一番バランス良さそうです。

ヨルシカ「春泥棒」も聴いてみました。こちらは曲との相性が良いのか、なんとも聞き疲れしにくい自然な聴こえ方です。低音は空間に響くような鳴り方でいて、背景のピアノは硬質感があって好印象。一方でボーカルの透明感はあと一歩というところで、もう少しハイにまで伸びてくれれば最高でした。このあたりは上位機種に譲るかたちでしょうか。

聴いていて良いと思ったのが、ノイズキャンセリングを付けた状態でもあまり音質の変化がないことです。常にオンにしておいても問題ないので、気兼ねなく使えると思います。また同社過去モデルで気になっていた無音時のホワイトバランスについては、ノイズキャンセリングオフ時でもかなり少ないレベルです。

またYouTubeで動画再生もテストしてみたのですが、遅延はかなり少なそうです。公式では搭載チップや左右同時伝送については公開していませんが、もしかすると同時伝送を行っているのかもしれません(ちなみにペアリング時は左右別れておらず1デバイスのみの設定でした)。

まとめ

多くのノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホンが2万円超えの中、有名メーカーとして1万円切りという価格に驚きました。しかも安かろう悪かろうではなく、外すと周囲の騒音に驚くほどの効果です。

室内や電車内で検証した限りでは、ノイズキャンセリングの効果はかなりのもの。高域の低減については苦手ですが、一方で低域についてはしっかりと除去してくれます。その高域についても、イヤーピースを遮音性の高いものに交換すると、ノイズキャンセリングとのとあわせ技で、より高い騒音低減効果を狙えます。

また、音質についても手を抜いているわけではなく、Soundcoreらしいドンシャリサウンドが持ち味です。大きめな11mmのドライバーで自然な低音を奏でてくれますので、ノリよく音楽を楽しめると思います。まだ完全ワイヤレスイヤホンを購入したことがない方、そしてノイズキャンセリングを楽してみたい方は、ぜひ試してみてはどうでしょうか。