写真をやっているなら誰もが聞いたことがあるだろう、そして憧れる方も多いだろうブランドが「Leica」だ。
しかしライカのカメラは、とても高い。たとえば、ボディ「ライカ M10」は約95万円、定番の50mmレンズ「ズミクロンM f2.0/50mm」が約31万円といった具合だ。とてもじゃないが買えないと、かつて学生の僕は思っていた。そして社会人の今でも、決心なく購入できるわけではないことは確かだ。
もし安く購入するならフィルムカメラを中古で購入するという手もある。それでも数十年前の「M3」が未だに10万円以上するし、レンズはデジタルもフィルムも関係ないのでやっぱり高い。さらに今はフィルム代がとても高い。軽く計算してみるだけでも、ある程度の枚数を取る場合は先述のM10を購入したほうが安いかもしれない。
そんなかたちでずっとライカに憧れていた僕だったが、ついこの間、転機が訪れた。それがエントリーモデル「M-E(typ240)」の発売というニュースである。
エントリーモデルといいつつも、価格は4000ドル。日本メーカーであればフラグシップモデルに手が届きそうな価格。しかし僕は思ってしまった……「買える」と。
そんなわけで、まだ発売日も価格も決まっていない段階で、ライカ銀座の直営店まで赴いたのだった。ひとしきりベースとなるM(typ240)を触ったあと、恐る恐る店員さんに予約を申し込んだ。まさに一念発起したのだ。
余談だが、このときには価格が決まっていなかった。後に54万円と価格が決まるのだが、4000ドルという価格が頭にあったため、最初からこの価格と知っていたら、さらに勇気が必要だったかもしれない。しかし幸いにも、このタイミングで予約したことが功を奏した。蓋をあけてみると全世界700台という噂の限定モデルで、日本での予約は即日完売という、なかなかに入手困難なモデルだった。動くのが少し遅かったら手に入らなかった可能性が大きい。
ライカは高級なカメラではあるが、車よりは安い。つまり通常モデルのM10でもローンを組めば手を出せない金額ではない。しかし落としたら壊れてしまうカメラであること、そして大きかったのがレンジファインダーという、これまで慣れ親しんできた一眼レフと構造の違うカメラであることから、使いこなせないのではという心配も大きかった。もちろん、カメラに興味がない方にとっては信じられない価格であることは確かだろうが……。
すでに手にした結果からすると、思った以上に手に馴染み、とても使いやすいカメラだと思っている。絞りやシャッタースピードが直接操作できるので操作もしやすいし、日本のメーカーと比べて多機能ではないので、機能の把握も楽だった(多機能が羨ましくも感じるが)。まさに、純粋に撮ることを楽しめるという感じだ。
話を戻すと、様々な心配があり、今までライカに勇気を出せなかった。気がついたときには、常に頭の片隅にライカを浮かべていたが、ずっと憧れのままだった。それがM-Eが登場してくれたことにより―良いのか悪いのか定かではないが―ライカの世界に足を踏み入れることに成功したのである。
半年から一年というスパンでカメラをメーカーごと変えていたことに嫌気をさしていたのかもしれない。もちろん日本のメーカーの機能性や使い勝手は素晴らしいし、シャッターを押すだけでピントも確実に合ってくれて失敗も少ない。しかしそれ故に、次から次へと出てくる新製品の存在が頭を支配していた。そのため、新製品が気にならない世界を体験してみたかったというのも、購入した理由としては小さくない。
デジタルのライカは大まかにM8、M9、M(typ240)、M10という流れになっているが、未だに10年以上前に発売したM8を使用しているユーザーも調べると多く見かける。実際中古店の価格もデジタルになってから値落ちの激しい中、ある程度の価格を維持しているのも驚きだ。それだけまだ需要があるということなのだろう。
そして今回購入したM-E(typ240)も、ベースであるM(typ240)が2013年発売ということから、実質6年前のカメラといえる。でもそんなことを感じさせないし、高感度に強いといいなと思いながらも、特に最新のM10に買い換えようと思わないのがライカの不思議に感じているところかもしれない。
そんなわけで、今まで憧れだったライカをM-E(typ240)からスタートさせた。まだまだ使いこなしていないし、操作もぎこちないかもしれない。それでも操作しているだけで楽しいし、なんなら眺めているだけでも幸せな気分になってくる。最初は高いと思っていたが、買ってよかった。
今までは半年程度で買い換えることも多かったが、今回は合わないと思って売ってしまうことが無いように願いたい。半年後、一年後の僕がどのように考えているか、そしてどのような写真体験を重ねていけるのか、今から楽しみだ。