USB-DAC代わりにアップル「USB-C 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」を買ってみた

USB-C 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ

スマートフォンのヘッドホン端子がなくなってもう数年でしょうか。近ごろのAndroid端末では復活しつつあったりしますが、iPhoneやiPadは今後も復活は期待できなさそうです。

ワイヤレス接続のイヤホンも増えてきましたが、いまだに有線イヤホンの需要は根強く残っています。特に音質を求めるなら有線にアドバンテージがあります。そういったこともあり、USB Type-C接続のオーディオアダプターは増えて続けています。

このアダプター、ご存知の通り、内部にデジタル信号をアナログに変換するDACチップを搭載しています。見た目は単なる変換アダプターですが、オーディオマニア用のUSB-DACやポータブルアンプと基本的な仕組みは同じです。

今回購入したのは、アップルから発売されている「USB-C 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」。モバイル用ではなく、PCで気軽に音楽を再生するために購入しました。

変換アダプターとしてはベーシックかつメジャーなモデルで、オーディオに興味のない多くのユーザーが持っていると思います。ですが試した結果、約1,000円という低価格ながらも侮れない性能をしていることがわかりました。

USB-C 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタのパッケージ

本モデルのように、変換ケーブル状にDACを実装した製品は、インラインDACと呼ばれたりもします。価格は1,000円から2万円くらいまで幅広く、ADV.の「Accessport」、NextDrive「SPECTRA」、iBasso Audio「DC05」など多くのモデルがラインナップされています(音質強化のためにDAC部分が大きいモデルも多く、厳密にはどこまでがインラインDACと呼べるか難しいところです)。

特に今回のアップルのアダプターは、まるでDACを内蔵していないかのような見た目ですが、USB Type-Cのコネクター部分にDAC周りの回路を搭載しています。調べたところによると、DACチップはシーラスロジックの「46L06-CWZR」というものを採用しているようです(情報ソース)。

DACのメーカーは数多くありますが、シーラスロジックのほか、AKMやESSが有名です。他にもオーディオ製品を調べているとクアルコム、リアルテック、ローム、TIなども見かけます。なお、今回の製品に使われているシーラスロジックは、高級アンプにも採用されるようなハイクオリティなDACも作っています。

余談ですが、DACを内蔵していないタイプのアダプターも存在するため、注意が必要です。500円程度の安い製品に多く、これはスマートフォンの内蔵DACからのアナログ信号を出力するアイテムとなります。DACを内蔵しないスマートフォンなどが大半なので、このタイプを間違えて買ってしまうと、つないでも音が出てきません。

気軽に使いたい製品ということもあり、finalのイヤホン「E2000」と組み合わせて試聴してみました。なお、イヤーピースにはSpinfitを組み合わせています。

この価格でここまでの音が出るならと、満足してしまいそうなサウンド。フラットでウォームな聴き疲れのない、アップルらしい音作りが持ち味です。高感度のイヤホンをつけても、ホワイトノイズが感じられないのは驚きました。

解像感は控えめですが、かといって細かい音も再生できており、まさに必要十分。高級なオーディオ再生システムも良いですが、たまにこういった「普通の音」を聴くと、なんだか安心感があります。

もちろん、NW-ZX300のようなプレーヤーと比較すると、ボーカルの厚みや立体感などは、一聴してわかるほどに違います。しかし小音量でBGMとして楽しむ程度であれば、あまり差は感じられません。

また、このアップルのアダプターは、音源の粗が目立ちにくいため、YouTubeといった圧縮音源を楽しむのにも向いているようです。遅延もほとんどないため、動画視聴にも最適。細かい音を聴き分けるようなサウンドではないため、FPSといったゲームは他製品の方が向いていますが、音楽ゲームなら本製品で有線接続すればストレスなく楽しめると思います。

M1搭載のMacBook Airのヘッドホン端子と比較してみましたが、やはり音の傾向は同様。ややMacのほうが音場が広いような気もしますが、誤差と言ってもよいレベルです。なお、今回はWindowsのデスクトップPCでつなげるために購入しましたが、Windowsでも動作は問題なく、同様の音色で再生してくれました。

最後に気になった点も上げておくと、音量がかなり大きいことは不満です。こんなに小さいアダプターなのに、困るほどのハイパワーで、E2000との組み合わせでは最低音量でもまだ大きいです。Macなら64段階の1、Windowsなら100段階の1に設定しても大きいため、再生ソフトのボリュームも下げて使っています(MacBook Airでも大きいと思っていましたが、それよりも音量が大きいです)。

長くなってしまいましたが、約1,000円という値段を考えると、十分に満足です。ケーブルが細めなどやや耐久性は不安な部分はありますが、自宅で使用するには問題ないでしょう。

アップルの「USB-C 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」をWindowsのPC用に購入するユーザーは数少ないと思いますが、動作に問題なく十分に使えると思います。上述のようにホワイトノイズも感じられないので、「オンボードのオーディオだとホワイトノイズが気になる」といったユーザーにもおすすめできるアイテムです。