デジタルカメラで「フルサイズ」を選ばなくてもいい理由

ミラーレス一眼カメラで増えてきた “フルサイズ” 。 数年前から大手カメラメーカー各社が、競うようにラインナップを拡充している。

では、フルサイズは何がすごいのか? 本稿では、このフルサイズについて、改めて確認してみたいと思う。

カメラのセンサーサイズについて

フルサイズとは、カメラに搭載されるイメージセンサー(撮像素子)の大きさのこと。その大きさはおおよそ約36×24mmで、これは一般的なフィルムカメラでの記録サイズとほぼ同じといえる。つまり「写ルンです」であっても、大きさだけで見るとフルサイズなのだ。

レンズ交換式のデジタルカメラでフルサイズと比較されるのが、「APS-C」という規格だ。フィルムではあまり普及しなかったが、APS(約23.4×16.7mm)のサイズに近いことからそう呼ばれている。デジタルカメラでは各社で大きさ若干が異なっているが、面積にするとフルサイズの約半分の大きさとなっている。

また、主にオリンパスとパナソニックがラインナップしているマイクロフォーサーズ規格は、約17.3×13.0mmという大きさだ。フルサイズと比較すると1/4の面積となっている。

なお、スマートフォンやコンデジには1/2.3型がよく用いられる。大きさは約6.2×4.7mmとなり、フルサイズと比較すると面積は約1/30。フルサイズがどれだけ大きいか、ということがよくわかる。

フルサイズをはじめ、センサーには様々な規格が存在するが、その大きな特徴は “大きさ” ということになる。

センサーサイズが大きいことのメリット

大きさが異なると何が違うか。それは、「ボケやすさ」「暗所での性能の高さ」の2点だ。

写真が趣味でない方ならば、一眼レフ=ボケるというイメージがあるかもしれない。実はこの “ボケ” の量は、センサーの大きさが関わっている。

これに加えて、撮影レンズの口径(明るさ)影響するが、1/2.3型のスマートフォンでフルサイズと同等のボケを得ようとすると、現実的ではない明るさのレンズ(計算すると約48倍)を用いなければならない。そのため、スマートフォンではAIなどを用いて、ソフトウェア的にボケを生成する方向にシフトしている。

端的に述べると、センサーが大きければ大きいほどボケ量が多くなる。逆をいえば、ぼかしたくなくてもボケてしまうのだ。

もし全体にピントがあった写真を撮りたい場合、センサーサイズが小さいカメラの方が得意。必ずしもフルサイズが優れるわけではないといえる。

ノイズの量はセンサーサイズで変わる

もう1つの特徴「暗所での性能の高さ」は、つまりノイズの量が少ないということ。スマートフォンやコンパクトカメラで夜景を撮ったとき、拡大するとザラザラしていたり、細部が塗りつぶされた用にのっぺりしてしまった経験はないだろうか。

これはノイズ、もしくはノイズを除去したことによるもの。ノイズが多ければ多いほど、画像の細部が失われていくのだ。

フルサイズセンサー採用のミラーレスカメラ「fp」

ノイズの量は画素ピッチの大きさが影響すると言われている。画素ピッチとは、1画素の大きさのこと。同じ2,400万画素であっても、面積が違うフルサイズとAPS-Cでは、1画素の大きさが異なってくる。

センサーが大きいほど1画素あたり面積が広くなるので、基本的には大きいセンサーのほうが有利。レンズの明るさとの兼ね合いもあるが、家の中や夜景などであれば、フルサイズがいちばんきれいに撮れる。

もし現在、スマートフォンで夜景や室内を撮影したときの画質に不満があれば、より大きいセンサーのカメラに買い換えると画質が向上するはず。一方で明るい場所であればノイズが発生しづらく、センサーの大きさによる画質への違いは起こりにくい。

また、明るいレンズでもノイズを抑制できる。取り込める光自体の量を増やすことができるためだ。もし付属のズームレンズで画質に不満がある場合、ぜび明るい単焦点レンズを試してみてほしい。

フルサイズ=至高ではない

まとめると、センサーサイズが大きくなればなるほど、ボケるようになり、暗所へでの画質も向上してくる。それにはレンズも関わってくるが、センサーの大きさが大きく関わってくることも事実だ。

今回は挙げていないが、センサーサイズが大型化することで、ダイナミックレンジの向上など、様々な画質面でもメリットも多い。しかしその一方で、レンズが大きく重くなる。価格も高くなってしまう。

画質だけを考えればフルサイズに利点が多くあることは確かだが、デメリットが存在することも事実だ。

プロであっても場面に合わせて、小さいセンサーのカメラを使う場合もある。けっしてフルサイズが至高というわけではない。使い方や求めるものに応じて、自分に合ったカメラを選びたい。