おすすめの「エスプレッソ本」3冊

近年のコーヒーの人気もあり、関連する書籍も増えてきたように思う。書店にいくと雑誌で特集されていたり、料理のエリアに特設コーナーが設けられていたりする。

とはいえ、日本ではまだまだドリップコーヒーが人気で、エスプレッソはまだまだ。ドリップと違い、気軽に始められないのもその原因だろう。したがって、以前よりも多いが専用の本はまだまだ少ない。僕がエスプレッソを始めた数年前の時点でも、情報もそこまで多くはなかったので、苦労した記憶がある。

そこで、手持ちの本の中からオススメの3冊をご紹介したい。初心者に最適なものから、よりステップアップしたい方向けのもの、日本では馴染みの薄いイタリア式に関するものまで、もし参考になれば幸いだ。

エスプレッソブック 基本技術とアレンジドリンク(門脇洋之)

2005年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップにてアジア人初の準優勝をし、現在は鳥取にカフェ「CAFE ROSSO」を構える、門脇洋之氏による著書。タイトルの通り、“基本技術”と“アレンジドリンク”の2点にポイントが絞ってあり、エスプレッソをこれから始めるには持っておいて損はない1冊だと思う。

基本技術では、「豆を挽く」「タンピング」「エスプレッソマシンの設定」「抽出」「手入れ」「牛乳のスチーム」といったポイントにわけて抽出に必要な技術を解説。どのグラインダーを使えばいいの?どのくらい細かく挽けばいいの?といった初歩的な質問から説明が行われている。

これら抽出に必要な要素が、写真で順番に説明されているのでとてもわかり易い。はじめての抽出も、手順に習ってゆっくり追っていけばこなせるよう、マニュアル的にまとまっている。エスプレッソの基準である9気圧、90度、30ml、30秒といった数字も、この本を読めばわかるはずだ。

そしてサブタイトルある“アレンジドリンク”についても多数紹介されている。ルンゴ、リストレット、アメリカーノ、マキアートといった基本的なものはもちろん、マロングラッセラテ、マロッキーノといったメニューも写真とレシピで紹介されている。

アルコール系のメニューや、同氏が大会で優勝した際のレシピが掲載されているのも魅力。ラテアートの方法も掲載されているので、この本さえ買っておけば、ひとまず困ることはないと思う。もし内容に不足を感じてきたら、次に紹介する、より中上級者向けの本も視野に入れてほしい。

新しいバリスタのかたち(阪本義治)

丸山珈琲のバリスタトレーナーである、阪本義治氏による著書。丸山珈琲と言えば、アジア初のバリスタチャンピオン 井崎英典氏を輩出した名店だ。軽井沢を本店に、長野に広く展開。東京では西麻布や尾山台、表参道、神奈川県・鎌倉にも店舗を構えている。

本の内容は、先述とは異なり中上級者向け。“「世界基準のバリスタ」を目指すためのスキルアップ教本”とサブタイトルにも書かれているように、既にエスプレッソを始めている方が、さらにステップアップするための1冊となっている。

丸山珈琲で飲んだエスプレッソ(飲み比べセット)

たとえば、テイスティング用のエスプレッソチェックシートが付属。各要素を点数化し、理想の抽出を追い求める方法が解説されている。要素としては、アロマを感じる、クレマの色ときめ細やかさを見るといったことや、フレーバーや酸の質や甘さといった味覚、そしてマウスフィールなどが挙げられる。

抽出についても、基礎技術ではなくチャネルを防ぐといった一歩先の内容。グラインダーについてもフラットとコニカルを求める味に合わせて選ぶなど、ネット上ではあまり多く見かけないような情報もあったりする。また、バリスタとしてのトレーニングについて触れていることも興味深い。

本が薄めで、全体的に内容が物足りない部分はあるものの、簡潔にまとまっていてわかりやすいのも好印象だ。

バリスタブック トップバリスタのすべて(横山千尋)

2001年に、第1回目のジャパン・バリスタ・チャンピオンシップで優勝した横山千尋氏による著書。カフェではなく、イタリアの「バール」についての文化や、イタリアのエスプレッソとはどういうものかということが本書から学ぶことができる。

エスプレッソといえば、日本ではスターバックスなどのイメージが強く、そのまま飲むイメージはないかもしれない。しかし、イタリアでは砂糖をたっぷりと入れて、3口で飲み干すのが主流とのこと。このことを知ったときには衝撃だった。そしてカプチーノも、熱々ではなく“ぬるいからおいしい”という。

このことについては、文章で「間違って伝わってきた」触れられている。そしてそれを広めるために、横山氏はイタリアで修行後、日本でエスプレッソを広めるために努力したと、本書では述べている。

個人的にエスプレッソの抽出に関して驚いたのは、アメリカを中心とした今日のエスプレッソと、イタリアのエスプレッソは全く異なるということだ。近頃のエスプレッソはVSTバスケットを使用して20gの豆を使用したりするが、しっかりと1杯あたり7g、20-30秒で20-35cc抽出というルールがあるという。

実際に抽出するとわかると思うが、シングルバスケットで7gの豆で抽出するのはとても難しい。おそらく、豆の違いもあると思う。イタリアでは最低5種類の豆をブレンドする必要があるらしい。

そのほかにも、バリスタとしての心構えや気をつけること、イタリアのバール文化といったものも読み取れる。アレンジレシピも掲載されており、イタリアの味を家でも再現できるのが嬉しいので、個人的にはおすすめだ。

銀座のデルソーレで飲んだエスプレッソ

なお、イタリアのエスプレッソがどういうものなのか気になった方は、同氏が開業したバール「デルソーレ」がオススメ。東京では、高輪、中目黒、銀座をはじめ、いくつかの店舗を展開しているし、横浜、大阪、岡山にもある。本場の立ちのみスタイル(バンコ)で気軽に味わえるので、ぜひ訪れてみてほしい。