ドイツのコーヒーはなぜ美味しいのか? その味を日本で再現してみる

ハンブルク、AmberCafeで飲んだ朝の一杯

ドイツへ旅行に行った際、そのコーヒーの美味しさに驚きました。ドイツの北に位置するハンブルクを中心に訪れましたが、どのカフェでもコーヒーが美味しかったのです。

味の特徴といえば、酸味が少なく苦味が強いこと。とはいえ苦味がガツンと来る形ではなく、またコクも十分にあります。近頃のサードウェーブのように鮮やかな風味もなければ、これと言って特に個性が強いわけでもないわけですが、それがどの店でも安定して楽しめます。

まさに普段の日常でコーヒーを楽しむ上で、「毎日飲みたい」と思わせるような味で、これが非常に心地よいのです。そしてこれは自分で淹れる場合でも同じであり、ドイツで有名なコーヒーブランドの1つ、ダルマイヤーのコーヒーをスーパーで購入し、ホテルの部屋にあった機械で淹れた場合でも同様の傾向でした。

やはりこれは豆のブレンドによるものなのか、とも思いました。ドイツは世界でも有数のコーヒー消費国でもありますし、歴史的にも昔から飲まれてきましたから。

ドイツのコーヒーはブレンドが主流で、抽出方法は機械によるフィルターコーヒー(Filterkaffee)、つまりドリップが殆どです。100年以上の歴史を持つ器具メーカー「メリタ」がドイツの企業であることから想像できるように、ドイツはドリップフィルター発祥の国でもあります。

ハンブルクのさらに北に位置する、リューベックという都市でテイクアウトした一杯

つまりドイツの豆を使用し、ドリップマシンで淹れればドイツの味が再現できるのか? そう思い、ドイツから持ち帰った豆を使用して、帰国後に早速試してみました。

しかし結果は芳しくなく、酸味が主張され、まるで別物の豆から淹れたコーヒーのようでした。酸味が強いということは、抽出温度が高いのかもしれない、と思いハンドドリップで実験も試してみましたがこちらも空振りに。理由がわからない状態が続きました。

そこで1つ相違点に気が付きます。それは “水の違い” ではないだろうか、ということ。気になって調べてみると、ハンブルクの硬度は場所によっても異なりますが、300mg/L前後となっており、東京の60mg/L前後と比較するとかなりの硬水です。

これをミネラルウォーターに例えると、ハンブルクは硬水のエヴィアン、東京は軟水のヴォルヴィックというふうになり、硬水と軟水とで異なっています。 そこで再度調べてみると、硬水では苦味、軟水では酸味が強く出る傾向があるようです。

検証では、ミネラルウォーターではなく、にがりを使用することで硬水を再現しました。使用したにがりは「あらなみの本にがり」というもので、ナトリウム2,900mg、カルシウム2,200mg、マグネシウム4,500mgです。これを硬度にすると224,362mg/Lとなります。

さらにボトルから滴下される質量を計測した結果、1滴が約0.1gということがわかりましたので、1滴=0.1mlと仮定して計算した場合、250mlの水道水に4滴加えることでハンブルクの硬度が再現できるということがわかりました。

早速その数値で水を作成し、これを用いて抽出してみると、“あの味” が再現できているではありませんか。明らかに先程までの強い酸味は失われ、ドイツで飲んだ味が再現できています。味の違いは水の硬度が原因だということが、今回の検証でわかりました。

紅茶の話になりますが、軟水では成分が抽出されやすく、硬水では成分が抽出されにくいという話もあります。そのためイギリスには硬水用の紅茶も存在します。したがって、もしかしたらドイツのコーヒーは硬水に合わせてブレンドがされているという側面もあるかもしれません。また購入したものは粉になっているタイプでした。日本においてドリップで淹れる時の粒度はグラニュー糖、もしくはそれより大きいくらいと例えられることもありますが、それよりもやや細かく挽かれているようにも感じました。

さて、硬度の違いがここまで味に影響するとは驚きでした。日本では軟水がコーヒーを淹れることが良いとされますが、味をコントロールする手段として硬水を使うのも選択肢として有効だということがわかりました。ダルマイヤーの豆は日本でも手に入れることができますので、これでドイツ気分を味わうのも一興かもしれません。