マシンから考えるエスプレッソ、シアトル式とイタリア式

こちらの記事でシアトル式とイタリア式のエスプレッソについて考えたが、今回はエスプレッソマシンのメーカーを視点に考えてみたいと思う。

エスプレッソマシンのメーカーは、日本では家庭向けに発売されているデロンギをはじめ、カフェでよく採用されているラ・マルゾッコ、ラ・チンバリ、シモネリや、Silviaを作るランチリオ、私が愛用しているロケットなど、様々なメーカーが存在する。

本稿では、シアトル式とイタリア式というテーマに沿って、ラ・マルゾッコとラ・チンバリの2社を挙げて考えてたいと思う。

ラ・マルゾッコは、主にシアトル系のチェーンで採用される事が多い。スターバックスは現在の全自動マシンに変わる前はこちらのマシンであったし、サードウェーブのカフェでよく見かけるのもこのメーカーである。

それを象徴するかのように、同社公式サイトでは、エスプレッソのレシピ(2杯分)についてこのように記述されている。

  • 17gのバスケットには16-19gドーシング、21gのバスケットには19-21gになるように調整する
  • 20-30lbs(ポンド/約9-13kg)でタンピングする
  • 25-30秒で28-36gのエスプレッソを抽出する

レシピのページ

一方、チンバリでは以下のように記述されている(1杯分のレシピ)。

  • 7gのコーヒー豆を用いる
  • 8-10barで抽出する
  • 抽出時間は25秒
  • 抽出されたエスプレッソの量は25ml

レシピのページ

ここで1度、イタリアエスプレッソ協会が定めるルールを見てみよう。

  • 抽出に用いる粉の量は7g±0.5g
  • 抽出後の液体の温度は67℃±3℃
  • 抽出時の圧力は9bar±1bar
  • 抽出を行う時間は25秒±5秒
  • 抽出されたエスプレッソの量は25ml±2.5ml
  • 豆は5種類以上のブレンドされた豆

(出典:IIACジャパン

見比べて頂ければおわかりと思うが、チンバリ公式のレシピはこちらに準拠している。

かといってマルゾッコが正しくないというわけではない。伝統にとらわれず、美味しい淹れ方を追求しているともとることができるからだ。同社のマシンが高度な温度管理やパドルでの抽出圧調整などを備えているのはこういった理由かもしれない。

一方でチンバリは高度な抽出温度管理に向かないHX(熱交換)タイプのマシンも多くラインナップする。これはイタリア式エスプレッソにおいて、ブレンドの豆を用いるので、7gという少ない豆の量で十分に味が出るし、焙煎もそこそこ深いので、極端に正確な温度管理が不要だからだと思われる。

今回は各メーカーのレシピを比較することで、マシンに対する考え方の一端に触れることが出来たと感じる。また機会があれば、他のメーカーも見ていきたいと思う。