今回は、エスプレッソにおいてのシアトルとイタリア、同じ名前であっても違う飲み物について考えたいと思う。
これらの違いを紐解くため、改めて歴史から探っていく。まずはコーヒーがいつから飲まれていたのか、それは定かではないが、wikipediaによると400年ほど前から現在に近いかたちで飲まれるようになったようだ。 しかし、コーヒーは高級品であり、社交や議論の場であったコーヒーハウスなどでは飲まれていたとはいえ、家庭で広く飲まれているわけではなかったという。
コーヒー文化の流れの1つ「ウェーブ」
そこでまず、コーヒーの普及の歴史である“ウェーブ”について、考えてみるとする。 近頃“サードウェーブ”という言葉を聞く人も多いのではないだろうか。
ファーストウェーブ 19世紀後半から1960年代にかけて起きた大量生産・大量消費の時代。インスタントコーヒーなどの普及により急速に家庭に広まった。
セカンドウェーブ 1960年代から始まり、2000年頃まで起きていた主にスターバックスやタリーズなどのシアトル系コーヒーから起きていた現象。コーヒーの風味を重視し高品質な豆を使用する。深煎りの豆を用いていることも特徴。エスプレッソマシンを用いるが、ラテやフラッペなどに混ぜるために使用され、エスプレッソ単体ではあまり飲まれない。
サードウェーブ つまりはスペシャルティコーヒー。コーヒーの栽培管理、収穫、生産処理、選別など、品質管理に加え、焙煎や淹れ方などすべての工程にこだわったもの。ハンドドリップで提供するブルーボトルコーヒーなどが有名で、従来主流だったブレンドではなく単一の豆が用いられることが多い。また豆は深煎りにすると個性が薄くなることから、浅煎りの豆も好まれる。
ファーストからサードまでまとめてみたが、ここでお気づきだろうか。日本ではかなりこれらの流れに影響を受けている部分が多いと思われるが、これはアメリカを中心とした話なのだ。
イタリアでのエスプレッソ
イタリアでは1901年にルイジ・べゼラによって蒸気式のエスプレッソマシンが開発されて以来、エスプレッソが飲まれてきた。
現在も変化はあれど、エスプレッソが好まれているという。 なお時代の変化か、若い人はバールに行かなくなってきているようだし、初のスターバックスもオープンしたようだが……(ドイツの若者もビールを飲まなくなってきているらしいし、同じようなものだろうか) 。
これを危惧してか、イタリアエスプレッソ協会では伝統を守るために、イタリアンエスプレッソについて、いくつかルールを設けている。
1杯(シングル)のエスプレッソの定義
抽出に用いる粉の量は7g±0.5g
- 抽出後の液体の温度は67℃±3℃
- 抽出時の圧力は9bar±1bar
- 抽出されたエスプレッソの量は25ml±2.5ml
- 豆は5種類以上のブレンドされた豆
(出典:IIACジャパン)
日本では、この条件で淹れられたエスプレッソは少なく、イリーやセガフレードといったイタリア発祥のチェーン店を除くと、イタリア式で提供している店は希少に思える。
それを表すかのように、日本はスターバックス、タリーズといったセカンドウェーブを代表するようなシアトル発祥のチェーンが目立ち、少し前になるが、ブルーボトルコーヒーを中心にサードウェーブコーヒーも広がりを見せた。
またラテにしたりフラペチーノにしたりと、エスプレッソは混ぜる前提のシアトル式が普及しているおかげで、エスプレッソを “単体で飲む” ということ対してに馴染みが薄いと思う。
筆者の周囲では「エスプレッソって少ししか無くて、すごく苦いんでしょ?」という人も多いと実感しており、そのたびに、砂糖を入れれば美味しく飲めるのに、と思うのだが……。
もし関東にお住まいの方でイタリア式エスプレッソに興味がある方は、個人的にお気に入りの「デルソーレ」という店をぜひ訪れて欲しいと思う。ジャパン・バリスタチャンピオンシップで優勝したことのある横山千尋氏によって創業した店で、銀座店などはイタリアのエスプレッソ協会から“本場の味”として認定されているのだ。